こうするとおいしいのよ!

 

カンパリソーダを連呼する彼女を引っ張るようにして店を出て、

 

「じゃ、カンパリソーダ飲めるところいくから。落ち着いて。」

 

こんなこともあるだろうと思い?お店のチョイスは何点か事前に調べていた。

 

「すぐ近くだからね。ちょっと我慢してね」

 

こんなこともあるかもしれないと、向かいにある第一ホテル東京ベイ(現シーフォート)の最上階あるバーを選んでいた。ホテルのバーならほとんどなんでもあるし、おなかが空いたら食事もとれるからでだ。お値段はちょっと高いのだが、、、

 

「すみません。ここではカンパリソーダ飲めますか?」

「はい。ご用意できます」

「では、お願いします。」

「こちらへどうぞ。」

 

バーカウンターが脇の、東京湾が一望できる二人用のテーブル席に通された。

 

ホテルのバーはそれなりの雰囲気で、当時はやりのベイフロントということもあり景色も抜群だし、まさに大人の世界。いい感じです。ピアノが奏でる生演奏のジャズもいい。

 

「ご注文は何になさいますか?」

 

ウエイターが注文取りに来た。

 

カンパリソーダでいいよね。」

 

「うん。カンパリソーダマティーニマルガリータヘネシーの水割ください。」

「かしこまりました。」

 

「一度にそんなに飲めるの(困)、、、、」

「大丈夫。大丈夫。持ってきてちょうだい」

 

一度にカクテル四杯も頼んだことはこれまでないし、女性の方からいきなり四杯一度に持ってきてなんていわれることは初めてです。たぶんほとんどの方はこんな経験しないでしょう。

 

バーテンが自ら確認に席までやってきた。

「お客様。ご注文の四品。一度におつくりして本当に大丈夫でしょうか?一度に四杯も頼まれるお客様は初めてですので。」

 

「大丈夫。大丈夫。持ってきてちょうだい。」

 

。。これ一体いくらするんだろう、、、、ここホテルのバーだし、、、

 

「私、おなか減った。何か食べていい?メニュー下さい」

「かしこまりました。」

 

メニューを見ながら、彼女が注文した。

 

「この黒アワビの特大ステーキください。」

 

、、、と、と、特大?、、、、時価、、、、、、これいくら(恐怖)

 

この女いったい何?

まあ、普通の男なら、ちょっと高くへ払えないからもっと安いものにしようよと正直に言うか、あまりの非常識さにあきれて席をけって帰るか、まあ、どちらかだろう。

 

あまりの出来事に呆然としてしまい、完全に意識が飛んでいました。

 

カクテルがずらりとテーブルの上に並びます。

 

「すみません。タバスコ持ってきてきください」

 

タ、タ、タバスコ?いったい何に使うの?

 

「こうするとおいしいのよ。」

 

ウエイターが持ってきたタバスコを手に取るや、蓋を開け、目の前のカクテルの中にジャンジャン注ぎ始めた。

 

お酒にタバスコ?

 

入れるは入れるは、、、その量尋常じゃない。

 

「こうするとおいしいのよ。」

今度は、僕の頼んだスクリュードライバー(一番安かった)のグラスと取ると、その中にタバスコを注ぎ始めた。

 

・・・・・ちょつと飲めない、、、

 

そう思ったとき、アワビのステーキが来た。

 

「おいしい!」

 

そらそうだろうよ。これいくらなんだろう。

 

食べないの?食べないならもらっていい?

 

自分の分をペロッと平らげるとこういった。

 

のど通るわけないだろう、、、、

 

彼女はひたすらアワビを食べ続け、酒を飲みいい気分のようだ。

 

早く家に帰ろう。そう思った。

 

彼女が食べ終わり、カクテル四杯をからにした後、

 

「もう遅いから、帰ろうか」

 

「じゃ、トイレ行ってくる」

 

早く帰りたい一心で会計を頼む。

 

「こちらでございます」

 

20万、20万、20万、、、、

 

金額が頭の中でコダマしていた。

 こんなに現金持っているわけがない。

 

「カードでいいですか」

「かしこまりました。」

 

一か月の給料がこれで飛んだ。

 

まだまだ、終わりません。

 

三発目が来ます。