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精神疾患
うちの家系はどうも精神疾患を患っている人に好かれるらしい。
面倒見がいいからのか、むげに拒否しないせいか、かなりこの手の病気を持った人が近づいてくる。
母は「ものみの塔」をやっていたせいで、かなりの精神疾患を持った方に慕われるようになった。
特に印象的なのが、「あつこさん」という方で、安田財閥のお嬢様だったらしい。子供のころ、100点を取らないと家に入れてもらえずかなり厳格な家庭で育てられたらしい。当時、50代だったと思うが「お父様、お母様」と呼んでいたし、すごい家に住んでいるにもかかわらず、格好はかなり見すぼらしく、マッチ売りの少女が太って、大人になって、赤い〇メガネをかけたような感じの人だった。結婚はしていたらしが、独り身の様でどうやって暮らしいているのはよくは知らない。
「ものみの塔」(エホバの証人)は、グローバリストの世界戦略の一環で、キリスト教関係のカルト宗教ということになっているので、信者は毎週行われる集会という洗脳教育の場で人類愛を強調される。つまり、都合のいい解釈なのだが、弱いんものを助けろ!というものだ。上の人間は共産党と同じで言うだけで自分はやらない。教義というものは、自分で実践するものではなく周りの信者に守らせるものらしい。
そのため、真に純粋だった母はその教えを実践した。
あつこさんという頭のおかしなおばさんから毎朝6:30になると電話がかかってくる。あつこさんは厳密には信者ではなく信者候補なのだ。信者になるにはバプテスマという教義試験に合格した者だけが受けられる儀式を通過しなければならないのだが、あつこさんはこの儀式を通過できなかったらしい。頭がおっかしいからなのか、賢すぎて信者になると拘束事項がものすごいため体よく拒否していたのかはわからないが、ともかく集会には来ていた。
「きみこ姉妹いますか?」
電話を母に渡すと、
母はただ話を聞いていた。
10分ほど経つと電話が切れた。
「何の話ししてるの?」
「自分の話だけよ。一通り話し終えると収まるみたい。ああいう病気の人はこちらが何を言っても聞いてないからね。ただ話を聞いてあげてるの」
でかい家ならともなく、2kの小さな住宅供給公社の賃貸物件の一室である。黒電話が鳴り響くと家のどこにいても聞こえる。しかも朝の6:30である。
それも毎日。ほかの家族はたまったものではない。
あつこさんからのモーニングコールにたたき起こされる日々の中で中高生時代を過ごした。
どうも、この手の病気の人は自分をかまってくれる人を探し出す動物的嗅覚に優れている。本来なら、こういうことは、その宗教の指導者のところに電話して相談するのが筋なのだが、それは絶対しない。拒否されるからだ。
母は拒否しなかった。
自分からもそういうにおいがするようで、妻がすり寄ってきたのもそういうものが自分の中にあったからなのかもしれない。
たいてい、この病気の人は見えないものに対する感受性が強い。というか、病的であるある。幽霊が見えるとか、神がかっているとか、オカルト的な要素を持ち合わせているっことが多い。妻もその一人だ。
ゲンショウ先生という有名な霊能者の方を紹介されたとき、
「あなたの奥さんは霊の触媒体質です」とはっきり言われたことがある。
なので、普段の行動を観察していても、普通ではない行動が多々出てる。
例えば、エレベーターの止まる階のボタンを自分が下りる階以外に数か所、必ず押す。
次エレベーターを使う人に対するいやがらせである。毎回である。
また、マンションに設置されている二台のエレベーター、両方のボタンを押すと激怒する。こちらとしては、先に来た方に乗れば時間の節約になるためそうするのだが、自分がボタンを押して呼んだエレベーターに他人が待ち時間なく乗るのが我慢できないらしい。
何気なく観察していくと、おかしなところが多々見えてくる。
ところが、これは本当に心を開いた人にしか見せない光景なのである。
「お前なんか死んじまえ!そばから離れないでね!」
境界性人格障害は恐ろしい。