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最初のデート代・20万円
妻のとの出会いは、アジの開きを買いに行ったことがきっかけでした。
たまたま、新鮮な魚介類が手に入る地域に住んでいたのでふらふらと商店街をうろうろしていました。
当時、付き合っていた彼女はいたのですが、遠距離恋愛だったので年に数回しか会うことができず、厳格なキリスト教の家庭で育ったので制限が多く、同じキリスト教の宗派の人間でなければ結婚は許されないという家庭環境の中で、家族からその彼女との恋愛は反対されていました。できれば、結婚したいとも考えていましたが、障害が多々あり、多くのストレスを抱え込んでいました。もともと、性格的に子供好きで面倒見のいいこともあり、早く結婚して子供のいる家庭を持ちたいともっていました。
そんな中、孤独の極みでアジの開きを買いに行ったわけですが、商店街の中にちょっと場違いなネオンがチカチカしている看板がありました。(なぜアジの開きなのか突っ込まれてると困ります(汗))
何だろうと持つて前に行ってみると、「テレホンクラブ」と書かれていました。
家族が入信していたキリスト教では、婚前交渉はもちろん、マスターベーションまで禁止という厳格で、風俗関係の店に関する知識は皆無でした。
なのでなんだかわかりませんでしたが、寂しいこともあり、店の人に話を聞いてみることにしました。
「このお店は何なんですか?」
「一般女性から電話がかかってくるので、お話してもらう機会を提供するお店です。」
「話をするだけでいいんですか\?」
「あとは、お客様次第です。その後どうされるかは、お相手とのお話の成り行きです」
「よくわからないのですが、ナンパするのが目的ですか?」
「お客様次第です」
結局その時は、よくわからなかったがのですが、好奇心もあり、店の中に女性がいるわけでもないし、電話で話をするくらいなら気分転換になるかな、という軽い気持ちで店に入りました。
部屋に通されると、そこは電話ボックスをいす席にしたような小さな空間で、目の前の棚には電話が一台、その前柄にソファ。これだけです。
「女性から電話がかかってきますので、受話器を取ってお話しください。他のお客様も同じ回線を使われておりますので、早くとらないとつながりません。ご了承ください。」
「早い者勝ちっていうことですか。」
「そういうことになります」
席に腰かけると、すぐに電話が鳴りだしました。
慌てて受話器を取り上げたのですが、話し中のプープープー。
また、受話器を置いて、しばらくすると電話が鳴りだしました。
すぐに受話器を取り上げたのですが、またもやプープープー。
何度やってもプープープー。
小一時間が過ぎてしまいました。
結局、何も話せず時間切れ。
料金を払い、帰ろうとすると店長らしき中国人から声を掛けられました。
「延長くれるなら、話だいじょぶ、できる、私する」
誰とも話ができなかったので、気分も滅入っていたため、店長の言葉を信じることにしました。
再び、元の部屋に戻りソファの前に座りました。
しばらくすると、また電話が鳴ります。
受話器を取り上げてみる。
「もしもし」
女性の声、しかも若い女性。
「もしもし、はじめまして」
「もしもし、そこどこ?」
「〇〇だよ、そっちは?」
「✖✖だよ。遠いね」
「電車なら、一時間かからないけど」
「あっそ。会う?」
「まだ名前も聞いてないなし。」
「〇〇〇」
「〇〇〇さんって呼べばいい?」
「〇〇〇でいい。で、会う?」
かなり頭の中が混乱しています。初対面(話)の女性からいきなり「会う?」なんて言われたこともなければ、しゃべりがまるで千歳飴をなめているような粘っこいしゃべり方だったので、ちゃんとした人なのかどうか???マークが宙に浮かんでいます。
「会わないんだったら電話切るよ」
「分かった,分かった。何時がいい?」
その日は、水曜日で平日だったのですが時間も時間だったので、次の日の木曜日ということになりました。
「じゃ、▽▽の駅に着て。改札で待ってるから」
「どうやって見分けたらいい?僕は紺のスーツで行くけど」
「アルファキュービックの服着てるから。じゃ改札で」
「ちょっと待ってよ。身長とか髪型とかわかる範囲で教えて」
「身長は175cmで髪型はキム・ベイシンガーみたいにふわふわってしてる」
「ちょつとわからないけど、改札にいる人に声かけるから」
こんな調子で初デートの約束が決まりました。
帰り際に、店長さんから
「いい子と話できたでしょ。また来てくださいね」
あとで、これは店側の「やらせ」だと気づくのですが、、、、
ただこの後のデート、大変なことになります。
つづく